帰還軌道
K・K



 ガガーリンによる人類の宇宙進出が始まってから約500年、
 人類にとって宇宙は憧れの場所ではなく生活を営む場所へとなった。
 無数の宇宙コロニーの建設、月への移住。
 人類は手の届くところ全てに生活の安定を求めた。

 宇宙暦499年7月。
 高度340kmに存在する国際宇宙ステーション(ISS-7)こそが人類の最前線。

 そう、人類が地球へ還る為の最前線。




 先の見えない暗闇の中、身体が重く目が眩む。立つどころか意識を繋ぐことで精一杯だと、龍司は思った。息が苦しいく、どれだけ肺に空気を押し込んでも入らない。呼吸がこんなに苦しいのかと、龍司は笑った。もう限界だと、仕方が無く龍司は右手を伸ばしてボタンを探す。だが身体は思い通りに動かず、ボタンを探せない。意識を繋いでいることすらやっとだった。
『5……、4……、3……、2……、1……』
 カウントダウンのアナウンスが流れ終わり、大きな音と共に周りが少しずつ明るくなる。身体の重さも和らいでいく。緊急停止ボタンと自分以外は何も無い部屋の扉が開き二人の男が龍司の方へと駆け寄る。
「ナンバー086番、リュウジ・カミヤ。重力レベル5クリア。精密検査室へと行き身体検査及び精神検査を受けるように」
 そう言って男たちは龍司を担ぐと部屋から出して精密検査室へ行くように指示した。堪らず龍司は部屋の外にあるベンチに寝そべり目を閉じる。重力レベル5から開放されて身体から一気に力が抜けると、頭から手や足の指先まで血液が酸素を運んでいるのが感じられ、重力レベル3がとても楽に感じる。
「リュージ、いつまで寝てる気だ?」
 声が耳に入り、龍司の額に何かが乗る。だがその冷たさが気持ちよく、そのまま目を開けようとしない。声の主はベンチを龍司の頭の真下の辺りから軽く蹴り上げる。蹴りの痛みは無く、振動だけが龍司の頭を貫き頭が浮く。
「……痛い」
 一言呟いて龍司が目を開けると、知っている顔が呆れているのを見つけた。
「……なんだ、アルか」
 そう言って再び目を閉じる龍司を再びアルの足が襲う。先程よりも強い衝撃に龍司が渋々体を起こすと、額に乗っていたジュースのパックが床へと落ちる。
「何だよ? 用が有るなら口で言えよ」
「さっさと精密検査に行け」
 アルが手短く用件を言う。
「あのな、俺は今重力レベル5の訓練を受けてクリアしたばっかりなんだぞ」
「僕はレベル7だ」
 龍司の口が止まる。それを見てアルの顔に呆れの色が浮かんだ。
「何をボケーっとしてる。さっさと検査を受けないと訓練やり直しになるぞ」
 アルが精密検査室の方を向いて龍司を促すと龍司は黙って歩き出した。突き当たりを曲がり一番奥の部屋へと入る。それを見送ってからアルは住居区へと向かった。龍司は検査室で軽い身体検査と簡単な口答質問をこなす。いつもなら辛い訓練後の休息時間のようにも感じるが、龍司の頭の中は先程のアルの言葉で一杯だった。
「最後に確認するけど、レベル6つまり地球と同じ重力以上の段階では作業訓練が追加される、その作業訓練もある程度出来ないと重力訓練をクリアしたことにならないから気をつけるように」
 医師の言葉を殆ど聞き流しながら、レベル5の重力耐久訓練をなんとかクリアした自分とレベル7をクリアしたアルを考えて、広がりすぎた距離と自分への苛立ちを龍司は隠せなかった。


 検査を終えた龍司はそのままエレベータで中心部の住居区へと向かった。エレベータが中心部に近づくにつれて重力レベルが下がり、体は少しの力で簡単に浮くようになる。中心部に着くと重力レベル0、無重力状態になり身体は空中に浮く。エレベータの壁を軽く蹴って龍司は通信室へと向かった。IDカードを通して通信機を起動させて、目の前のモニターを指で叩きながら待つ。
「もしもし?」
 暫くして女の子の顔が現れて、ベッドの一部やネームカード、医療機器などが一緒に写る。
「俺だ、春奈」
「『オレ』さんですか? 私の知り合いにそんな名前の方はいませんけど……」
 女の子はわざと困ったようにボケて見せる。だがそのボケはある意味間違いではなく、龍司の胸をチクチクとつつく。
「……悪かった。龍司と言います、春奈さんでしょうか?」
「なんだ、やっぱり兄ちゃんか」
「俺で悪かったな」
 他愛の無い会話を繰り返す。それだけの事で心が落ち着く。
「今の地球って、どうなってるのかな」
「……青い海と緑の大地が広がっているさ」
 一瞬、動きの止まった口からどうにか出てきた言葉。固まる表情、締め付けられる心。
「そっか、だったら安心だね」
 春奈の変わらない声が龍司を更に締め付ける。
「……安心?」
「だって兄ちゃんは地球に行くんでしょ?」
 龍司の顔に笑みが戻る。
「もしかしたら行けないかもしれないぞ」
「もしも行けなかったら怒るからね」
 春奈が笑いながら答える。龍司も顔を固めながら、笑って答えることしか出来なかった。
「綺麗な地球を見てきてね、もう見えない私の分まで」
 そして通信は切られた。龍司は何も見えなくなった画面を見ながら、静かに泣いた。



 ISS-7の中央管理区、その一室の会議室で地球帰還計画のプロジェクトチームが集まっていた。四角く並べられた机をぐるりと囲うのはプロジェクトチームの経営者や技術者、スポンサーに政治家達。その手元には今回の会議の資料が配られていた。
「今回配られた資料にある金額が今回の地球帰還計画の予算案です」
 全員が配られた資料に目を通す。機体の燃料費、クルーの食事、測定機器など数十の項目が予算に組み込まれている。
「ヴォイド君、この予算は多すぎるのではないか?
これでは計画反対派がまた噛付いてくるぞ」
 会議に出席している男から声が上がる。資料を配ったヴォイドが声の方を向く。そこに居たのはスポンサー企業の社長だった。社長は不満そうに資料を叩きながらヴォイドを睨んでいる。
「地球に降下してからの機体の整備、クルーの食事や健康管理、地球脱出時の燃料等、全て地球で得られない事を想定すると申し訳ありませんがこれが妥当な金額となってしまいます。」
 社長は納得出来ないと言いたげに資料を机の上へと投げて背もたれに寄りかかる。他のスポンサー達も口をそろえていた。
「ですが、予算を削る方法が無いわけではありません」
 ヴォイドが周りの反応を見ながら口を開くと、その場にいる人間全ての視線が集まる。
「最も単純で効果の大きいものとして、クルーの人数を減らすことを提案します」
 静まり返った会議室が一気に騒ぎ出す。ヴォイドはそれを冷めた目で眺めながら話を続けた。
「クルーを一人減らせば一人分の人件費だけでなく、地球へと持っていく食事や個人用安全装置、帰還後のクルーの状態検査などの予算を抑えることが出来ます。」
 こちらの都合でそんなことをすれば問題になる。会議室の空気がその意見で固まろうとしているとヴォイドは更に言葉を続けた。
「自主的に辞めたのならば問題はありません」
 社長達が何かに取り付かれたように固まり、声が消える。ヴォイドがそのまま辞退候補となっているクルーの名前を読み上げようとすると、スポンサーと対面に座っていた男から声が上がった。
「ヴォイドさん、それは我々技術者側から見ればこれ以上のクルー削減はこの計画を失敗させることに繋がりかねない」
「ですが計算上ではあと七人程度削ったところで計画に支障は無いはずでは?」
「それはあくまでも計算上の人数だ、現場に最低限の人数しか導入しない事は非常に危険と言わざるをえない」
 技術者と経営者、二つの異なる立場の男が意見をぶつける。
「大体あなたはこの計画の為のクルーの教官でしょう。その教官がクルーを引き摺り下ろすことをして良いのですか」
「技術者の頭を捨てて経営者の頭を入れてみてください。我々は過去に一度、この計画を失敗させているのですよ。もしもこれ以上の失敗が起こってしまえば地球帰還計画自体が消滅してしまう可能性もありえます。私の使命はこの計画を成功させることです。情などと言う下らないもので惑わされたりはしない」
「だから計算上の数値を信用せずに不測の自体に備えられるようにしなければならない筈だ」
「ですがその計算も貴方達が算出したモノでしょう、それとも自分達の仕事に責任が無いのですか?」
 吐き捨てられた言葉が会議室を静寂で支配する。それを破ったのは技術者でも経営者でもスポンサーでもなく、ヴォイドと対面に一人だけ座っている政治家だった。
「確かに予算は大変厳しいモノとなってしまいましたし、地球帰還計画反対派の人間達が黙っていないかもしれません。しかしこれは人類の総意であり、その為にも計画を頓挫させるわけにはいかない。どうか皆様のお力添えをお願いします」
 政治家の一言によって会議は終了した。参加したスポンサーも技術者も次々と会議室を出て行く。会議室と周辺にヴォイドしか居なくなったことを確認して、政治家は口を開いた。
「ヴォイド君、出来るだけ穏便にお願いできますかな? 自主的にってヤツを」





「リュージ、こっちに俺たちの名前が乗ってるぞ」
 その言葉に連れられて龍司はアルの見ていた掲示板のデータを手元に寄せる。

『以下の者は至急、教官室に来るように
  "アルフレッド キール"
  "フレディ アンダーソン"
  "ジョージ スミス"
  "マルクス キアナン"
  "パトリック レオノーフ"
  "白秋 李"
  "龍司 神谷"
 以上』

「一体何やらかしたんだ?」
 そのデータを見て二人は全く覚えの無い呼び出しに首を傾げながら、呼び出された教官室へと向かった。教官室についてノックをすると中からヴォイドが現れた。
「ヴォイド教官、呼び出し用の掲示板に名前が書かれていたのですが」
 二人を冷たい目が貫く。いつもと違う雰囲気に二人は後ずさりしそうになる。
「アルフレッド君と龍司君、ワザワザ来て貰ってすまない。少し場所を変えよう」
 二人はヴォイドに連れられて会議室へと入った。まだ片付けられていない資料、飲みかけのコップと出しっぱなしの椅子。ヴォイドは二人を適当に座らせるとそれまで閉じていた口を開いた。
「君達は、地球までの距離を知っているか?」
 突然の、それも今更聞く事でも無い質問に二人は戸惑った。
「当然です、このから地表まで約340Km、時間にして十分から二十分程度。それがどうしたんですか」
「……その通りだ、ここから地球までの距離は他のステーションまでよりも、月よりも近い」
 ヴォイドが天井を見ながら言葉を続ける。二人はその言葉の意味が理解できないまま、ヴォイドの言葉を聞き続けた。
「それでも、全ての人が地球に行けるワケでは無い」
 ヴォイドが振り向き二人へと視線を向ける。氷のように冷たく、鋭く突き刺さる視線。
「君達は本気で地球に行けると、行くことを許されると思っているのか?」
 冷酷な言葉が、龍司とアルの二人に突きつけられた。





 部屋に戻り身につけていた物を投げ捨てると、レベル2の疑似重力がそれを軽く跳ねさせる。それを無視して龍司はベッドへと倒れ込む。超低反発性素材が龍司の重さを受け止めて沈む。
「君達の父親が人類初の地球帰還船、ジュリエルを墜落させたからだ」
 今日のヴォイドの言葉が頭の中を駆け巡る。
「君達の父親のせいで発生したデブリが多くの宇宙船やコロニーに衝突した。そしてデブリによって何百何千の人の命が奪われ、壊れた宇宙船やコロニーが更に多くのデブリを生んだ。その結果、宇宙開発も地球帰還計画も大きく停滞せざるをえなくなかった」
 いつも地球と宇宙しか見ていなかった父を、父親としては最低だが船乗りとしては最高の機関士と信じていた。今までの世界が音を立てて崩れ落ちる。何をどこまで信じればいいか分からなくなる。だがどんなに否定しても、かき消そうとすればするほどヴォイドの言葉が龍司を蝕む。
「そんな男達の子供が地球へ帰ることを、人類が許すと思うか」



 暗く、何も無い世界。そこに意識だけを放り込まれたように、ただ存在する自分がいた。自分以外の誰も、何も無い。叫んでも声は出なく、もがいても何も触れられない。ここが何処なのかも分からない。
「……気分はどうだ?」
 不意に後ろから聞こえた声に驚きながら、龍司は後ろを振り返った。だがおぼろげに姿が見えるだけ、誰なのかは分からない。
「あんたは誰だ」
 不審に思いながらも龍司は口を開いたが、自分の声が聞こえない。言葉を喋れているのか分からない。だが返事が返ってきて、その言葉は聞こえる。
「俺は俺であり、そしてお前だ」
 龍司にはふざけた回答の様に思えた。しかし声を荒げても相手は反応を示さない。
「ココは自分がたった一人で、自分の為だけに生きる。それが出来る人間しか来れない世界だ」
 彼は姿を現そうともせず、龍司の問いに答えようともしない。そして彼がそのまま姿を消すと、世界はまた龍司一人になった。声は出ない、手足も動かない。たった一人の世界、酷く不安でたまらないくらい苦しい。だが嫌いではない、龍司はそう気付き始めていた。





 龍司が訓練区へと向かおうとすると、アルの姿を見つけた。いつもの訓練服ではなくただの私服と大きいバッグ、浮かない顔。アルが龍司に気付き目が合うと、アルは目を逸らした。
「……アル?」
「リュージ、先に行かせて貰うよ」
 そう言って龍司の横を通り過ぎようとするアルの腕を龍司が掴んだ。
「どうして諦めるんだよ、折角ココまで頑張って来ただろ」
 アルが目を逸らしたまま口を開くと、次第に龍司の腕から力が抜けていった。
「僕は父さんが一流の宇宙飛行士だって信じてた。でもあんなことをしてしまったなんて、僕には信じられない」
「だから何なんだよ、だから諦めるのか。お前にとっては遊び半分だったのかよ」
「そんな分けないだろ、地球帰還計画は人類の大きな夢だ。僕だって地球に行きたい」
 興奮して次第にエスカレートする二人の言葉、同じものを見て、聞いてきた筈の二人の分岐点。
「だったら何で諦める」
「リュージだって分かってるだろ。僕たちは地球に行っちゃいけないんだ」
 この前のヴォイドの言葉が龍司の頭を過ぎる。だがそれをかき消すように、龍司は声を荒げる。
「分かるワケ無いだろ、行きたいから行く。俺が決めた、だから行く」
 龍司の言葉がアルの胸に深く突き刺さる。一度割れたコップは二度と元には戻らない。自分で割ったコップの筈だった、なのにアルはどうしてこんなにも後悔するのか分からないふりをして、気持ちをごまかした。
「それは子供の考え方だ。もっと周りに目を向けろ」
「そうやって周りの目を気にするのがお前の悪い癖だ。ただ上品に生きたいなら、夢なんて語らないで捨てろ」
 もう龍司は感情を隠す術も止める術も意味を成さなかった。ただ自分の腹の底から強い想いだけが溢れ出してくる。そしてその想いを感情のままに吐き出すしていた。
「どれだけの罵倒を浴びても、泥水を啜ってでも、俺は地球に行くって決めたんだ」
「だからって……」
 アルの言葉を否定し、かき消すように龍司の言葉は続いた。
「人類とか親とか世間とか、何かを決める為に一々何かを言い訳にするな」
 冷たく残酷な一言が、アルを突き刺す。もうアルは何も言うこと出来なくなっていた。ただ黙って、龍司の言葉に耐える。
「お前は一生外から地球を眺めてろ。俺は地球に行く」
 そうして二人は、別々の世界へと分かれた。





 暗い世界の中、ただ一人存在する自分。周りには光も色も、空間すらも存在しない。ただ自分だけがいる世界。だが前とは違う。迷い込んだワケじゃ無く、自分からその領域に足を踏み入れていた。しばらくすると目の前に彼が現れた。龍司はそれを待っていた。
「意地を張ってどうなる? 多数派に従う……。それがお前たちのルールだろ?」
「だがそれが常に正しいとは限らない……」
 龍司の目が細く暗くなり、彼を睨む。そんな龍司を見ながら彼は笑った。
「そんな顔をするなよ。オレはお前の唯一の理解者だろ?
だからワザワザこんなところまで来てやったんだ」
 龍司の目が更にキツくなる。
「目の前に広がるのは茨の森かもしれないぞ? 一人でどうやって進む」
「だったら全部焼き払って荒野にするだけだ」
 彼が仕切りなおして再び問う。龍司は冷たく答えて、龍司の顔を見ながら彼は小さく笑う。
「お前の後には誰も付いてこないかもしれない……」
「金魚のフンなんか、お前だっていらないだろ?」
 その通りだ、そう応えて彼は笑った。
「これ以上先に進めば生きて帰れないかも……」
「ここまで来て立ち止まるくらいなら進んで死んだ方がマシだ」
「お前が死んだところで、誰も知らないかもしれない。手を合わせてくれる人もいない。それでも良いのか」
「死んだ後の事なんて関係無い」
 龍司が更に拳を強く握ると、その拳から血が滴り落ちた。彼はその血に一瞬だけ視線をやり、またすぐに龍司へと視線を戻す。
「妹の春奈はどうする? あの子も関係ないと言えるのか?」
「地球へ行くのがあいつとの約束だ、だがそれ以上に自分が行きたいから行くんだ」
「だから肉親すら振り返らずに先へ進むのか。だったら例えお前が生き残って帰って来ても、その先は修羅しか無いぞ。己の欲望を満たす為だけに動く壊れた生き物に、お前はなれるのか?」
「成れる成れないじゃない、成るんだ。」
 それだけを聞いて、彼は満足そうに龍司の前から消えた。
「そうだお前は決めたはずだ、誰も信じないと。だったら決して忘れるな、お前は一人きりだ。自分の欲望を達成させるために、お前自身がそれを選んだんだ」
「ああ、上等だ」




 一年後、地球帰還計画は正式に認証されて、人類の悲願だった地球帰還への第一歩が踏み出されようとしていた。地球帰還船の最終チェックが終わり、龍司達はベルトに身体を固定して出発のカウントダウンを待つ。
「ついにココまで来た。あと少し、あと少しなんだ」
 龍司は帰還船のモニタに写る地球を眺めながら一人呟いた。ISS-7が軌道上の障害物チェックを終わらせ、管制室から発進の許可が下りる。
「ついに始まりますね、我々の悲願、地球帰還計画」
「ああ、問題だったコストも七人中六人が自主的に辞めたことで十分余裕が出来た。ヴォイド君、君のお陰だ」
 計画プロジェクトチームのヴォイド達が管制室でその時を待っていた。
「私などよりも、計画反対派を抑えて頂いた先生のお陰です」
「私は人類の幸せの為には労力を惜しまないのが信条なのだよ」
『この日は人類の大きな夢の第一歩だ。諸君の幸運を祈る』
 カウントダウンが始まり、龍司たちクルーや管制室の管制官、全ての人類の緊張が高まる。ISS-7から切り離された地球帰還船は、そのままゆっくりと地球を目指して進み始めた。一人の少年の孤独、人類の夢、莫大な資金、そして計画反対派もその全て抱え込んで、地球帰還計画は動き始めた。


 宇宙暦500年6月、ついに人類は地球へと帰り始めた。



―END―




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