冬湖
影
石灰色の空と 鉛色の水面(みなも)と
あとは 白だった
舞うでもなく 吹くでもなく
雪は重く 真直ぐに降りてきて
色のない空間を埋めていた
音は既に 其処にはなかった
湖は暗く佇み 鉛色を寄せて返す
その鈍重で単調な営みに
時間は既に圧し潰されてしまったようだ
音もなく 時もなく
雪は周囲を白く埋めていき
私は空を見上げる
?々(しんしん)と雪が降る
湖だけが白に埋まらずに其処にあった
覆い隠すように降り続く雪を呑み込み
暗い湖水を 只々変わらず 湛え続けて
誰もが泣いている 言葉にならない思い
誰もが耐えている 叫びにならない痛み
皆 埋まってしまえばいいのだ
私と湖だけが 色を持って其処にあった
白く綺麗に 染まることもできずに
最後まで世界から爪弾きにされた異端児のように
私はまた空を見上げる
此処は静かだ
波は寄せて返す
唯 静かだ
滋賀 県北 深雪の琵琶湖